コピーライターに向いている人は、常に「なぜ?どうして?」を掘り下げて考えている人だと思います。
- なぜ、人の心に残る言葉なのか?
- なぜ、世の中に必要とされているのか?
- なぜ、この商品は売れるのか?
僕は2020年に「宣伝会議コピーライター養成講座」に通い、コピーライティングを学びました。講座では現役のコピーライターが講師を務めています。キャッチコピーの書き方や考え方・課題の添削を行ってくれます。
講座の中で感じた「いいキャッチコピーを書ける人」は、深い思考力と豊かな発想を持っていました。思考力とは「なぜ?どうして?」を深く追求できる探求心だと思います。
具体的な例を挙げ解説していきます。なにかのヒントになれば幸いです。
コピーライターに向いてる人は「なぜ?どうして?」を常に考えている
コピーライターは、語彙力や言葉の知識・技術が大事だと思っている人が多いのではないでしょうか。僕もコピーライティングを学ぶ前は、言葉遊びの延長くらいに安易でいました。しかし、実際に学びはじめて感じたことは、語彙力や言葉の知識・技術はあくまで表現の最終段階に過ぎないと思ったのです。
コピーライティングは、思考力と発想力といった「アイデア」が軸にあります。そのアイデアを形作った「コンセプト」をもとに言葉の表現に落とし込んでいきます。コンセプトを考える上で重要なことは、広告対象に「なぜ?どうして?」という「問い」を向けることです。この「問い」の立て方がコピーライターにとって大切な資質だと思っています。
- 「なぜ」他の商品より優れているのか?
- 「どうしたら」ターゲットは振り向いてくれるか?
- 「どうして」興味を持ってもらえないのか?
こうした疑問や仮説を広告対象に向けることで「切り口」が見えてきます。観点や視点をアイデア・コンセプトに変えていくのです。
「宣伝会議賞 2019」グランプリのキャッチコピー例に考える
ここからはひとつのキャッチコピーを例に考察を交え、具体的に解説していきたいと思います。紹介するキャッチコピーは「第57回宣伝会議賞」グランプリの作品です。素晴らしいキャッチコピーです。
広告主 : パナソニック
課題 : 世界No.1長もち乾電池「エボルタNEO」の魅力を伝えるアイデア元彼の目覚ましが、
引用元 : SKAT.19
夫を叩き起こし続ける。
笠間 悠(24歳)神奈川県
パナソニック「エボルタNEO」は、2017年10月2日「世界一長もちする単3形アルカリ乾電池」としてギネス世界記録に認定されています。(2021/2/22 現在)
「なぜ?」このキャッチコピーはグランプリを獲れたのか?「どうして?」「何を?」プロのコピーライターは評価したのか?僕の勝手な考察ですが、解説していこうと思います。
宣伝会議賞とは

宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたはCM企画という形で応募する公募広告賞です。
【宣伝会議賞のポイント】
50年以上の歴史を持つ、コピーライターの登竜門
応募した作品が実際に使われるかも…?!
前線で働くコピーライターが審査員【当賞の趣旨】
引用元:宣伝会議賞Webサイト
若手コピーライターの啓発、ならびに人材の発掘・育成やコピーライターの意識の向上を目的に開催しています。課題の特性や時代背景を捉えていて、さらにコピーライターとしての将来性、可能性の大きさを感じさせる作品を期待しています。

商品の価値を伝えるだけではアイデアにならない
キャッチコピーのアイデアを考えるために商品の特徴や性能を整理していきます。

「エボルタNEO」の最大の特徴
パナソニック「エボルタNEO」の最大の特徴は「世界一長持ちする単3形アルカリ乾電池でギネス認定されている」ことです。ギネス認定されている実績は、どの企業にも真似できません。
「エボルタNEO」ほかの特徴
- パッケージデザインが格好いい
- ユニバーサルデザインでプラス極側・マイナス極側には識別しやすい
- 長持ちで買い替え回数が少なく済み経済的
「エボルタNEO」いろいろな用途
乾電池は、生活に密着した商品です。日常で使用するいろいろなシーンを、思いつくかぎりリストアップしていきます。「エボルタNEO」の製品ページがあるので、情報収集も欠かさずしましょう。
- デジタルカメラ
- 携帯用電話式電池式充電器
- ゲームコントローラー
- TVリモコン
- ライト
- マウスなどのPC周辺機器
- 掛け時計 / 置き時計
「エボルタNEO」の製品Webページ
https://panasonic.jp/battery/products/drycell/evoltaneo.html
「エボルタNEO」生活者との接点や利用シーン
日常生活のシーン以外に使われているケースはないか考えてみます。
- 日常生活全般
- 子どものおもちゃ
- 災害時の備え・防災グッズ
キャッチコピーの「切り口」を考える
洗い出した特徴や性能・利用シーンを踏まえて「切り口」を考えていきます。「切り口」とは「商品の何を伝えれば、生活者の心を捉えるのか」を考えることです。
パナソニック「エボルタNEO」は「ギネス世界一認定の単3形アルカリ乾電池」という最大の特徴があります。「長持ち」することがメリットになるのではないでしょうか。課題も「長もち乾電池、エボルタNEOの魅力を伝えるアイデア」となっています。
長持ちすることで「生活者はどのようなベネフィットを得るのか?」。ターゲットを意識して心に響く言葉を探していきます。

そのキャッチコピーは「誰に向けた言葉」なのか
ターゲットは誰か?
では次に、ターゲットを考えてみます。「エボルタNEO」は、誰がどのような時に使うのでしょうか。
ターゲットは誰か?キャッチコピーは誰に見てほしいのか?
ターゲットに着目し、キャッチコピーをもう一度見てみます。
元彼の目覚ましが、
引用元 : SKAT.19
夫を叩き起こし続ける。
笠間 悠(24歳)神奈川県
主語になる言葉はありませんが、「元彼」「夫」から、既婚の女性だとわかります。「起こし続ける」という言葉から、結婚して数年は経っている夫婦のようです。
乾電池は、スーパーや家電量販店・ドラッグストアなど、生活用品として生活者に密接に関わっている商品カテゴリーです。主婦層に向けて興味を惹くように描かれています。
製品の良さを「どう描くか」
このキャッチコピーがとくに素敵だと思うところは「世界一長持である」という性能を「元彼」から「夫」を登場させることで年月を表現し、さらに「叩き起こし続ける。」で強調しているところです。
また「目覚まし」という生活に密着した具体的なシーンを表現しているところも、生活者と非常に近いキャッチコピーといえます。
ユニークさもアイデアもあり、素敵なキャッチコピーだと思います。
コピーライター「なぜ?どうして?」を常に考えている人が向いている
こうしてキャッチコピーを掘り下げてみると、短い言葉の中にさまざまな意図が隠れています。
「なぜ?どうして?」などの「問い」を向けることで制作意図は見えてきます。
日常に溢れている広告に目を留め、疑問や仮説をぶつけることがコピーライターの思考法だと、コピーライター養成講座で教わりました。
キャッチコピーは「書く力」は必要ですが、それと同じくらい「観る力」も必要だと思っています。
みなさんも「心に届いたキャッチコピー」は、どうして「自分の心に届いたのか」を考えるようにしてみてください。きっといいトレーニングになります。
この記事が、なにかお役に立てたら嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
