公募にチャレンジ

第14回 介護作文・フォトコンテスト – キャッチフレーズ部門で最優秀賞を受賞

第14回 介護作文・フォトコンテスト

 第14回 介護作文・フォトコンテストに応募しました。応募作品と制作過程の振り返りをしたいと思います。

 なんと、キャッチフレーズ部門で「最優秀賞」を頂きました。ありがとうございます。

第14回 介護作文・フォトコンテスト - キャッチフレーズ部門で最優秀賞を受賞
第14回 介護作文・フォトコンテスト – キャッチフレーズ部門

 この記事では、作品ができあがるまでの制作過程を中心に、振り返りをしてみたいと思います。

 あなたの公募活動のヒントになればうれしいです。

hisashi
自称コピーライター。Webエンジニアで元お笑い芸人です。  やかましいタイトルから始まってすみません。  まずは自己紹介させてください。  こんにちは、寿(ひさし)と申します。 ...

介護作文・フォトコンテストとは

 介護作文・フォトコンテストは、公益社団法人・全国老人福祉施設協議会が主催しています。
 高齢者との「つながり」をテーマに掲げ、介護に関わる高齢者ご本人・介護職員・医療スタッフなど、介護現場を支えるすべての人達を後押しするために、作文・写真などの作品を公募しているコンテストです。

コンテストの各種部門

 コンテストは、4部門と学校賞に分かれています。

  • 作文・エッセイ部門
  • フォト部門
  • キャッチフレーズ部門
  • 手紙部門

 学校賞は、小学校・中学校・高等学校・大学 / 短期大学 / 専門学校から選出されます。

賞金は最高10万円と豪華

 賞金は最大10万。公募の賞金としては高額な部類のコンテストです。第14回と開催の歴史もあることから、公募の実績としても十分な価値があると思います。

審査員が豪華

 審査員も豪華で、有名作家さんやコピーライターさんがいます。

  • 審査委員長 吉井 敦子(公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 理事)
  • 岸本 葉子(作家・エッセイスト)
  • 山田 真由美(カメラマン・介護福祉士)
  • 渡辺 潤平(コピーライター)

 なかでも、キャッチフレーズ部門の審査員「渡辺 潤平」さんは、博報堂出身のコピーライターで、実績に、進研ゼミ・ユニクロなどの広告制作があります。受賞歴は、カンヌ国際広告祭 / メディア部門ブロンズ、日経広告賞部門賞、読売広告賞最優秀賞など受賞。現在は渡辺潤平社を設立しご活躍されています。日本を代表する広告クリエイター・コピーライターさんです。

表彰式が豪華

 翌年には授賞式が行われ、表彰式・記念対談の様子がYouTubeで公開されました。作文・エッセイ部門の記念対談では「作家・岸本葉子さん」と「芥川賞受作家・羽田圭介さん」が、作品の講評・感想を語り合っています。

募集期間

2021年9月15日(水)~11月30日(火)23:59
※郵送の場合は、11月30日(火)当日消印有効。

 敬老の日(9月の第3月曜日)前後と覚えておきましょう。

応募資格

特に問いません。(国籍、性別、年齢、職業不問)
※受賞作はペンネームでの掲載も可能。

SNSで気軽に応募できる

 キャッチフレーズ部門・手紙部門に限りますが、Twitterから気軽に応募できます。

  • コンテストの公式アカウント(@kaigo_contest)をフォロー
  • ハッシュタグをつけてTwitterに投稿
    • キャッチフレーズ部門:#介護キャッチ部門
    • 手紙部門:#介護手紙部門

 その他の部門は、専用応募フォーム・郵送での応募になります。

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キャッチコピー部門に応募しました

 今回はキャッチコピー部門に作品を応募しました。まずは詳細をみていきましょう。

キャッチフレーズのテーマ

 テーマは次の3つから選択することになっています。

  1. 介護に関わる方々への「応援」「励まし」
  2. 介護の「やりがい」「魅力」を伝えるもの
  3. 日本の介護を「こう変えていこう」という宣言、および提言
介護作文・フォトコンテスト

応募規定

  • 40文字以内
  • 1人10作品まで
  •  応募フォーム・Twitterから気軽に応募できるので、キャッチフレーズを考えることに集中できます。

賞金

  • 最優秀賞(1点) 5万円
  • 優秀賞(2点) 2万円

最優秀賞に選出頂いたキャッチフレーズ

 では、応募した作品を紹介したいと思います。

キャッチフレーズのテーマ

介護の「やりがい」「魅力」を伝えるもの

介護作文・フォトコンテスト

キャッチフレーズ

始めましての自己紹介を
何度もした。
その度に自分を
好きになった。

キャッチフレーズに込められた想い

始めましての自己紹介を何度もした。

 この一文は、認知症の方々との関わりを表現しています。

 認知症の方は、脳機能の疾患により、短期記憶が正常に働いていません。自分の居場所が分からない・人の名前が覚えられないなど、日常生活を送ることに周りの方々のサポートが必要になります。

 僕は何度も自己紹介をしました。

 たとえ明日、僕の名前を覚えていなくても、また「始めまして」と自己紹介をします。

その度に自分を好きになった。

 「何度、自己紹介すれば名前を覚えてくれるの?」と、そう思う方もいるでしょう。それは自然な感情だと思います。介護は常に自分の心の葛藤と戦わなくてはいけません。

 認知症の方々との関わりは毎日続いていきます。葛藤の日々に終わりはないのです。無理に心の葛藤に蓋をしてしまうと、いづれ心は疲れ切ってしまい、介護が続けられない状況になることもあるでしょう。

 自己紹介はコミュニケーションの一部でしかありません。でも、とても重要な役割を果たしていると思っています。人は誰でも自分の名前に愛着があり、名前に使命感を持ちたいと考えるものだからです。

 「何度、自己紹介すれば名前を覚えてくれるの?」と、ネガティブな思考を、自己紹介をする度に「自分の名前を好きになるキッカケかな?」とポジティブに置き換えてほしいと思いました。

 何度もする自己紹介を、さらに自分を知り好きになるキッカケにしてほしい。このキャッチフレーズにはそんな想いが込められています。

表彰状と賞金5万円を頂きました

 コンテスト主催の公益社団法人・全国老人福祉施設協議会さんから、表彰状と賞金を頂きました。賞金も嬉しかったですが、作品が評価されたこと・キャッチフレーズの実績として認められたことが何より嬉しかったです。

 そして、このキャッチフレーズが介護を支える方たちに届いて、少しでも励みになればと心から祈っております。

有名コピーライターさんにお言葉をいただきました

 翌年に行われた表彰式で、キャッチフレーズ部門の審査員である「渡辺潤平さん」に、コメントを頂きました。

 渡辺潤平さんは、キャッチフレーズの日本最大の公募、宣伝会議賞の審査員も務めていらっしゃいます。

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キャッチフレーズの制作過程

 では、キャッチフレーズに辿り着くまでの制作過程を振り返ります。制作のヒントになれば幸いです。

介護現場で働きながら取材を重ねる

 日々、高齢者の方・認知症高齢者の方、介護職員・関係者、ご利用者さまご家族と接しています。介護の世界は本当にいろいろな、予想外の出来事が起こるんです。予想外の出来事を前に、表面上は冷静を装いますが、心と感情はグラグラと揺れ動いています。そのときの感情をメモにとり、キャッチフレーズの素材にしていました。

 とくに認知症高齢者の方々との関わりは、今までの人生で経験したことのない出来事ばかりで「数分前のこと」を忘れる・「自分の居場所」が分からない・「生理的現象」で失敗することがあるなど、思うようにできない状況があるのです。

 揺れ動く感情をメモにとることは、キャッチフレーズの取材をすることでもあります。自分の気持ちを書き出すことは取材と同時に、出来事を俯瞰的に捉え、客観的に解決策を導くこと・心の負担や不安を軽減する行為でもありました。

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プロのコピーライターに勝つためには「いい取材をする」しかなかった

 どうしたら「いいキャッチフレーズ」を書けるのか。考えて出した結論は「いい取材」をすることでした。 

 漫画家の「森田まさのり」さん。代表作に「ろくでなしブルース」「ルーキーズ」がある、日本を代表する漫画家さんです。

 いい取材のヒントは「べしゃり暮らし」という作品でした。べしゃり暮らしは若手芸人を描いた青春ストーリーです。
 森田さんは、べしゃり暮らしを描くために、取材活動の一環として吉本興業の芸人養成所、NSCに入学しています。1年間、養成所に通い若手芸人を取材していました。
 べしゃり暮らしは、若手芸人の葛藤や仲間との友情が繊細に描かれていて、芸人の世界観をリアルに再現しています。実際に僕はNSCに通っていたので、漫画を読んだ時は納得と衝撃の連続でした。

 さらに、卒業後は漫才コンビを組みM-1に出場して3回戦まで勝ち進んでいます。正直プロの凄さを感じ、ゾっとしました。

 この森田さんの作品に向き合う姿勢が、僕に現場取材の大切さを教えてくれました。

キャッチフレーズ公募のキッカケはコピーライター養成講座

 キャッチフレーズを書くようになったのは、宣伝会議さんが主催しているコピーライター養成講座でキャッチフレーズを学んだことでした。

コピーライター養成講座 - 基礎コースで学ぶこと【宣伝会議】コピーライター養成講座基礎コースで何を学ぶのか?この記事では、講座全体で学ぶキャッチコピーの基礎を紹介しています。講座の受講を考えている方は参考にしてください。この記事の内容は、宣伝会議さんで「コピーライター養成講座基礎コース」の無料体験セミナーで解説されています。 ...

 当時、Web制作会社でエンジニアとして仕事をしていましたが、サイト運営やコンテンツ制作に興味を持ちはじめ、文章力を学ぼうと思ってコピーライター養成講座に通いました。

キャッチフレーズがいろんなところで活躍

 コンテストで最優秀賞を受賞したことで、キャッチフレーズがいろんなところで使われました。

翌年のキャッチフレーズに

第15回 介護作文・フォトコンテスト
第15回 介護作文・フォトコンテスト – リーフレット

 なんと、受賞したキャッチフレーズは翌年のコンテストサイトに使われています。キャッチフレーズから想像されるイラストと一緒に、僕の考えたキャッチフレーズが、またひとつ別の作品として世の中に発信されました。

 とても光栄で記念になり、感激しました。

勤めている介護施設でキャッチフレーズを取り上げて頂きました

介護作文・フォトコンテスト
介護作文・フォトコンテスト取材

 今回の受賞を勤めている介護施設の方に話したところ「ぜひ社内報で取り上げたい」と取材の申し込みがありました。

 僕自身、キャッチフレーズ公募は個人的なことだったので恐縮でしたが、少しでも一緒に働く職員のみなさまへ励みとなるならと思い、作品に込めた想いを語らせてもらいました。

 本当にありがたく、嬉しかったです。

介護をテーマにキャッチフレーズに挑戦

 宣伝会議賞をはじめ、介護をテーマにした公募にチャレンジしています。

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コンテストに応募する意味とは

 コンテストに応募することは、自分の可能性に気づくことかも知れません。

 もともと僕は、Webエンジニアでした。エンジニアの仕事をしながらも、何か自分の力を出し切れてないような、モヤッとした感覚がありました。というのは、僕よりプログラミングが得意な人は、同じ会社にも世の中にも沢山いて「勝てないなぁ」と常に感じていたからです。他人との比較や競争に意識が向いていました。
 エンジニア業界でしのぎを削り切磋琢磨しようと感じていれば、プログラミング技術を磨くためにもっと努力を重ねていたことでしょう。

 でも僕は、キャッチフレーズの勉強に興味を持ちました。そして、その学びが起点になり、今回の受賞につながっています。コンテスト応募は、自分の才能や得意なことの種を見つけてくれるスタート地点なのかも知れません。

 他人との比較や競争をやめ、自分自身と向き合うようになりました。

なぜ、介護にこだわってキャッチフレーズを書くのか

 僕が介護の仕事を始めるキッカケになったのは、母親の介護を考えた時です。

 僕は現在、70を超える母親と一緒に同居しています。今は元気ですが、いづれ介護が待っています。介護が必要になったときに、介護を勉強しているのでは遅いと思って介護の仕事を始めました。

 介護の仕事は、芸人をしていた過去の経歴が生きたのか、僕に向いていると感じました。高齢者の方々とのコミュニケーション、認知症高齢者の予想外の行動にツッコミを入れながら仕事を楽しんでいたんです。同時に、命に関わる緊張感と責任感にやりがいを感じ、切なさも受け取っていました。高齢者の方が目標を持ち、自立に向けて頑張る姿に、僕はいつも感動するんです。

 僕は介護の仕事が好きなんです。

 介護の仕事は、人の人生のサポートができる素晴らしい職業ではないでしょうか。

 しかし、世の中の介護職に対するイメージは、いまだ、3K(キツい・汚い・危険)のままです。

 また、この業界は大きな問題を抱えています。日本は、2025年以降、超高齢化社会に突入します。2025年問題と言われ、超高齢化社会が引き金となり、介護職員の人員不足・介護保険料の負担増など、介護業界を取り巻く社会課題は山積みです。

 人気のない介護職。低賃金の労働環境では、働いている介護職員は軽んじて見られることも多いです。誰でも自分の仕事に誇りを持ち、周りから感謝され称賛されたいと思っているはずです。

 これら一つひとつのネガティブなイメージを、ポジティブなイメージに変えられる力が、キャッチフレーズにはあると思っています。

 好きだから、変えていきたい。

 僕が書くキャッチフレーズには偽りがないように。
 生まれたキャッチフレーズは紛れもない真実なんです。

 それが、介護をテーマにキャッチフレーズを書き続ける理由です。

 あなたの創作活動のヒントに、伝わることを祈っています。

キャッチコピーの作り方
キャッチコピーの考え方 - 作り方のコツとはキャッチコピーの作り方がわからない。考え方が色々ありすぎてどう書いたらいいのか。言葉を真似するだけではキャッチコピーは書けるようになりません。この記事では基本的な考え方を解説していきます。基本を抑えることで再現性のある書き方を身につけることができます。...