ビジネスの場面で「ベネフィット」という言葉を使う機会、結構ありませんか?
ベネフィットの意味を正しく理解し、ベネフィットを正確に伝える知識を身につけると、人を動かすことができます。
「ベネフィット」に近い言葉で「メリット」があります。このふたつは意味を混同して使われることが多い言葉です。しかし明確に言葉の意味が違います。ベネフィットとメリットとの違いは、ベネフィットは「商品(対象)を手にしたことで得られるうれしい未来」、メリットは「対象の特別な特徴」です。
こんにちは、寿(ひさし)と言います。
キャッチコピーを考える上でベネフィットを考えることはとても重要です。商品の価値を正しく理解し、商品の良さを正確に伝えるアプローチが見えてくるからです。
具体例を示しながら解説していければと思います。
この記事は次の書籍を参考にしています。
ベネフィットの意味とは「顧客にとっての価値」です
ベネフィットの意味を辞書で引くと、次のように書かれています。
ベネフィット
利益、恩恵
引用元:goo辞書
もう少し噛み砕いた表現にすると、顧客が「商品を手にすることで得られる価値」となります。売り手は顧客に対して価値を売っているのです。
その商品自体に価値があるわけではなく、商品を手にした後の体験や、幸福感といった感情の動きに価値があるのです。売り手はその対価として、報酬やお金と交換しています。
「ベネフィット」と「メリット」の意味の違い
「ベネフィット」と混同しやすい言葉に「メリット」という言葉があります。こちらも辞書で意味を調べてみます。
メリット
積極的価値、そうするだけの長所
引用元:新明解 国語辞典
メリットは商品の特徴を指します。要するに他の商品より優れている性能や機能です。
ここまでのまとめ
- ベネフィット:顧客が商品を手にすることで得られる価値
- メリット:商品の特徴
商品は、その商品から得られる価値が支払う対価より大きい場合に売れます。

「腕時計(商品)」を例に「ベネフィット」の意味を深堀りしてみる
では「腕時計(商品)」を例に、ベネフィットの意味をより深く理解していきましょう。
腕時計のベネフィットを考えてみます。
「腕時計」のベネフィット
- 常に時間が確認できるので、スケジュール管理がしやすい
- 服装に合うデザインでお洒落を楽しめる
- 高級時計で優越感に浸れる
- 相手にプレゼントして喜ばせられる
- 値段が安いので色々な種類を買いたい
これらは商品の特徴ではなく、体験や感情の動きになっています。
では腕時計に価値を感じない人は、なぜ価値を感じないのでしょうか。
価値を感じない人とは
- 時間はスマホで見る
- 腕時計は腕が締め付けられて窮屈
- 時間に縛られない生活をしている
「腕時計」のメリットはどうか?
- 文字盤が見やすい
- 手巻き式で電池交換しなくていい
- ベルトが変えられる
- 防水・頑丈
メリットは製品自体の優れた特徴です。これらは製品の性能によって変化し、他の製品と比較されます。メリットが変化することで、同時にベネフィットも変化することを理解しておきましょう。
「G-SHOCK(腕時計)」のベネフィットは?
- 頑丈・防水だからキャンプで腕時計を付けたまま川遊びできる
- 認知されているブランドだから安心して身につけられる
- 認知されているブランドだからプレゼントできる
- 壊れにくいので生涯使えて経済的
ブランドや性能によって「顧客が感じるベネフィット」が変化しています。
「機能的ベネフィット」と「情緒的ベネフィット」の意味
ベネフィットは、さらにふたつのカテゴリーに分類されます。「G-SHOCK(腕時計)」を例に解説していきます。
- 機能的ベネフィット
- 情緒的ベネフィット
機能的ベネフィットとは?
機能的ベネフィットとは、商品の物理的な性能・機能的な価値です。実用性に関わります。「G-SHOCK」の機能的ベネフィットは次のようになるでしょう。
- 頑丈・防水だからキャンプで腕時計を付けたまま川遊びできる
- 防水なのでランニング時、汗を気にせず走れる
- 壊れにくいので生涯使えて経済的
- 取扱店舗が多く、サポートを受けやすい
情緒的ベネフィットとは?
情緒的ベネフィットとは、商品が顧客にもたらす体験や感情的な価値です。満足感・優越感など人の感情に関わります。「G-SHOCK」の情緒的ベネフィットは次のようになるでしょう。
- デザインが豊富でお洒落を楽しめる
- 限定モデル・コラボモデルは希少性が高く身につけていると話題になる
- 認知されているブランドだから安心して身につけられる
- 認知されているブランドだからプレゼントできる
機能的ベネフィット・情緒的ベネフィット、どちらが優れていればよいなどの区別はありません。顧客が(ターゲット)が求めている欲求に対し機能的訴求、情緒的訴求を使い分けて考えることが大切です。
顧客の欲求を理解して「ベネフィット」を考える
顧客は「自分の欲求を満たすため」に商品やサービスを購入します。人間の欲求とベネフィットは深く関係しており、人間の欲求を理解するためのアプローチとして「マズローの欲求5段階説」がよく使われます。詳しく見ていきましょう。
「マズローの欲求5段階説」とは

マズローの欲求5段階説は、その名の通り人間の欲求を5段階に区分しています。1層目から上に登るにつれて、社会的な立場や経済的な状況が高くなっていきます。
- 1層:生理的欲求
- 食欲・排泄欲・睡眠欲
- 2層:安全欲求
- 安心・安全な暮らし・事故・病気・経済的安定
- 3層:社会的欲求
- 社会人・コミュニティ
- 4層:承認欲求
- 地位・名誉・名声・出世・他人からの評価
- 5層:自己実現欲求
- 自己の探求・創造
ターゲットの欲求から商品のベネフィットを探る
では「G-SHOCK(腕時計)」は、顧客の欲求の何を満たしているのでしょうか。マズローの5段階欲求説を踏まえて考えてみます。
- 2層:安全欲求
- 壊れにくいので生涯使えて経済的
- 取扱店舗が多く、サポートを受けやすい
- 3層:社会的欲求
- 認知されているブランドだから安心して身につけられる
- 身だしなみとして時計を身につけたい。持っておきたい
「G-SHOCK」は価格帯から考えて、安価な腕時計とハイブランドとの中間に位置する腕時計です。ですので上記の2つの欲求がメインのターゲットになるかと思います。ただし、高額なG-SHOCK・コラや限定のものは「4層:承認欲求」も満たされると考えられます。
顧客の求める欲求に対して、ベネフィットを使い分けましょう。
相手の立場に「ベネフィット」を考える
顧客が何を望んでいるのか・何を欲しがっているのかを考えましょう。
売り手は商品の良さを知っているので、無理にメリットを押し付けてしまうケースが多くあります。セールスばかりの販売員から商品を買おうとは思わないですよね。それは「押し売り」になっているのです。大事なのは「相手が求めていること」を表現することです。
ベネフィットが必要になる場面
ベネフィットを理解したところで、実務などで利用する場面を考えてみます。
商品のキャッチコピーを考える
商品の機能的ベネフィット・情緒的ベネフィットを考え、キャッチコピーの「切り口」・アイデアを考えるキッカケにします。

セールスレター・DMを考える
商品をアピールするためのセールスコピー・セールスレターを書く場面で「ベネフィット」を用います。考えたベネフィットを道筋に、文章を組み立てていきます。
商品のメリットだけを伝えても顧客の心は動きません。セールスコピー・セールスレターでは、商品がもたらす価値を伝えましょう。
面接の自己アピール・自己分析・履歴書に「ベネフィット」使う
自己紹介・就職活動・転職活動など、自分をアピールする場面で「ベネフィット」はとても有効に使えます。
企業に対し「あなたを採用した場合、企業にもたらす価値」を意識して書いた履歴書と何も意図のない履歴書では差は歴然です。
「企業にとってどんな価値をもたらす人材か」が明確に書かれていれば「どんな仕事を任せられるのか」「利益や成果などの結果」をイメージしやすく、熱意ややる気も伝わります。
履歴書に経歴や実績だけを記載するだけでは、面接官の感情は動きにくいのです。
ベネフィットは生活のあらゆる場面で役に立つ
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ベネフィットの意味を理解し自分の考えや視点が整理されると生活のあらゆる場面で役に立ちます。
- 物を買う時に「ベネフィット」で選ぶようになる
- ベネフィットを意識した人間関係が築ける
- 自分の価値観を知るきっかけになる
- 相手に価値を正確に伝えられるようになる
- 人の心に届くアイデア発想がしやすくなります
みなさんも生活の場面、日常でベネフィットを意識してみてくださいね。なにか、お役に立てればうれしいです。