キャッチコピーは100本書いてから選ぶ
ひとつのテーマに対し、あなたはキャッチコピーを何本書きますか?
書けるだけ書きますか?
それとも渾身の一本だけ書きますか?
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元芸人です。
100本をひとつの目安にしてみませんか。
10本では少なすぎるし、50本では中途半端。200本はさすがにきついですよね。
100本がちょうどいいと思いませんか?
そして100本書いた中から「これだ!」と思うキャッチコピーを選びましょう。
ぼくは2020年に、宣伝会議コピーライター養成講座を受講しました。現役コピーライター講師がいうには、どうやら書けるだけ書いた方がいいみたいです。
数を書けるコピーライターは、それだけで才能があるらしいです。数を書けない人は、書けるようになるために、論理や方法を身につけましょう。
なぜキャッチコピーは数を書くことが重要なのか
数を強調するのには、きちんとした理由があります。
100本キャッチコピーを書こうとすると、それだけ商品をいろんな視点から見つめなくてはなりません。つまり人と違った切り口を見つけるために、100本書くのです。
100本書けばそのうち1本くらい、いいキャッチコピーがあるはず。まとめると、
- キャッチコピーの切り口を発見できる
- たくさんの候補から、キャッチコピーを選ぶ目を養う
- 100本書いたら、いいキャッチコピーになる言葉がある
これら理由で、100本を目指して書くようにします。
重要なのはキャッチコピーの切り口
中でも重要なのは、キャッチコピーの切り口を見つけることです。
100本すべて、完成されたキャッチコピーである必要はありません。99本はボツになるわけですから。ひとつでもキャッチコピーの発想やアイデアを見つけることできれば、それでいいのです。
キャッチコピー制作のプロセス「散らかす」「選ぶ」「磨く」
ここでキャッチコピー制作プロセスを整理しておきましょう。制作プロセスは三段階に分かれています。
- 散らかす
- 選ぶ
- 磨く
ちなみにこの考え方は次の本を参考にしています。著者の谷山さんは、ぼくが通っていた宣伝会議コピーライター養成講座の講師であり、宣伝会議賞の審査員でもあります。
キャッチコピーを書き散らかす
まずはキャッチコピーを書き散らかします。
思いつきでも単語レベルでもなんでも構いません。言葉を吐き出すように書けるだけ書きます。頭の中を空っぽにしていくイメージです。料理でいうなら材料を用意する工程です。
缶ビールを例に考えてみます。
イメージや印象を書き出してみる
その商品・サービスに対して、自分が感じているイメージや抱く感情など、思いつくままに書いてみましょう。
- のどごし爽やか
- いい仕事ができた後に
- 仲間との乾杯
- 苦味がたまらない
- 外で乾杯できる
- 公園で話し込む時には、缶ビール
- 蓋を開ける音がたまらない
- とりあえずビール
- 最近ビールが美味しくなってきた、大人になった証拠
- 注ぐより、缶ビールの方が乾杯しやすい
マインドマップを使うと情報整理がしやすいですよ。
ターゲット(視点)を変えてキャッチコピーを書く
自分以外の「他の誰か」になりきって考えてみましょう。
新入社員になってみますね。
- 仕事がうまくいった夜は、贅沢なビールで乾杯
- 先輩に奢ってもらった缶ビールが忘れられない
- ビールが似合う大人になった
- 同期とは公園で乾杯
- 大人は苦味の違いがわかる
- 缶ビールを開ける音が好きだ
- 高級なお店より、外で飲む缶ビール
- とりあえずビールが様になってきた
- のどごしの意味がわかるようになってきた
視点を変えるテクニック
人物でなくてもいいです。モノや動物・俯瞰的な視点も加えてみると発想が広がっていきます。
- 神様
- 犬・猫
- 海外の人
- 高校生
ふざけるぐらいでちょうどいいかもしれません。世の中の印象のこるキャッチコピーほど、ユーモアに溢れています。
ぼくは大喜利みたいにして考えています。
「(商品)は、〇〇」でキャッチコピーを書いてみる
発想を広げるために「缶ビールは、〇〇だ」と、ひとことで表現してみます。
- 缶ビールは、冷蔵庫にいつもいれておくと安心だ
- 缶ビールは、時期によって味わいがある
- 缶ビールは、グラスに注いだほうがおいしい
- 缶ビールは、昼に飲んでもうまい
- 缶ビールは、冷蔵庫でキンキンに冷やしておく
広告対象に「疑問」や「問い」を投げかけることが、商品のベネフィットを探るきっかけになります。ツッコミを入れて、その商品・サービスの価値を見つけていきましょう。
散らかしながらキャッチコピーの切り口を探す
この散らかす行為は、商品・サービスの良さを伝える切り口を見つけるため行います。
その商品・サービスに対して自分が持っている視点が、他人とは違うキャッチコピーを生み出します。
数を書けない人は以下の行動が足りていないかもしれません。
- 商品・サービスに対して調べる
- 商品・サービスを実際に体験する
- 人から商品・サービスのこと話を聞く
プロのコピーライターも「現場取材と体験が9割を占める」のだそうです。そして自分の中に溜め込んだ言葉を吐き出すことが、書き散らかす工程なのです。
キャッチコピーを選ぶ
書き散らかしたキャッチコピーは、選んで捨てていきましょう。
名残惜しい気持ちはわかりますが、最終的に1本のキャッチコピーを選ばなくては行けません。自分の心が動いていないキャッチコピーは、とりあえずバッサリと切り捨てていきます。
キャッチコピーを100本書く意味
- 5本の候補から、1本のキャッチコピーを選ぶ
- 100本の候補から、1本のキャッチコピーを選ぶ
当然、後者のほうがいいですよね。ここで100本書いた意味が出てくるのです。
あなたは何を基準にどのような根拠や理由でキャッチコピーを選びますか?
この書き散らかして選ぶという工程は、自分がいいと思うキャッチコピーの基準を鍛えています。
キャッチコピーを磨く
選んだキャッチコピーたちは、そのままでは使いものになりません。
言葉の表現を洗練させるために、言葉を磨いていきます。
この時点でいいキャッチコピーが選べていないと、どんなに言葉を磨いても駄作になってしまいます。
- 「てにをは」を見直す
- 句読点の位置を見直す
- 言葉のリズムを見直す
- 口に出して読んで観る
- 類語で言い換える
- 口語・文語などの使い分け
- 比喩・隠喩で表現してみる
- 主観・客観で言い換えてみる
言い回しや文法などを駆使して、リズミカルなキャッチコピーに仕上げていきましょう。
磨くだけではいいキャッチコピーにならない
キャッチコピーは、言葉を磨くことにだけこだわり過ぎると本来の目的を見失います。
キャッチコピーの本来の目的とは、クライアントの課題解決です。
言葉のレトリックだけに注力したり、世界観や作品性に凝りすぎたりするのはやめましょう。
たくさんの切り口やアイデアを考え、アイデアの土台で人の心を動かす言葉を表現することがコピーライターの本質なのです。
あなた独自のキャッチコピー制作方法を作っていってくださいね。
キャッチコピーを「100本書くこと」を目的にしてはいけない
極論をいってしまえば、1本目でいいキャッチコピーが見つかれば問題ありません。
ですがプロのコピーライターでさえ、それは無理と言っていました。プロも数を書くそうです。
その商品・サービスの「まだ世の中に知られていない価値」を発見するためには、相応の思考の量が必要なのだと思います。
キャッチコピーは、アイデアが短い言葉に表現されているに過ぎません。他人が思いつかないアイデアを考えるために、キャッチコピーを100本書いて可能性を探りましょう。