エッセイの構成に悩まなくなる・読者を意識した展開・ドキドキさせる感情曲線の設計とは
エッセイの構成を考える時は、
ぼくは、映画のシーンを参考にしています。
映画の冒頭シーンって、舞台となる街やその世界の引きの画から始まりますよね。
それからぐぅっと主人公にフォーカスが近寄って、役者のセリフとともに物語が展開していきます。
物語の冒頭は、舞台設定や前提の知識を伝える必要があるんですね。それをしないで物語を展開していくと、観客は置いてきぼりになってしまう。
映画はおおよそ、そのような始まり方をしていると思います。
エッセイの構成でも同じだと思います。
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元お笑い芸人です。noteで介護をテーマにしたエッセイを書いています。
365日、毎日エッセイを書いています。
内容や出来事が面白くても、構成の仕方を間違えてしまうと台無しになってしまいます。
話は変わりますが、
ぼくはお笑い芸人をしていまいした。
漫才のネタを作る時「フリ」と「オチ」を意識して台本を作っていきます。
たとえば、
フリが「昨日街で、木村拓哉にすれ違って声をかけられた」とします。
オチが「握手しようとした瞬間、パッとそこで目が覚めた」だとして。
「夢だったのかよ!」っていう話ですが、
このフリとオチの構成を間違えてしまうと、
「昨日夢でさ、木村拓哉と握手する夢を見たんだけど」と言ってしまったら、先にネタバレしていて聞いている方はなんの驚きもありません。
エッセイでもこうした書き方をしてしまうと、どれだけ面白い出来事があったとしても全てぶち壊しです。
エッセイは映画や小説ほど、裏切りやどんでん返し・伏線回収は必要ないかも知れませが、あった方がおもしろいと思いませんか?
この記事では、エッセイの構成について紹介していきます。
すべらない話のから考えるエッセイの構成
ここは元お笑い芸人らしく、
芸人のエピソードトークを例に、エッセイの構成について解説してみようと思います。
話はじめは状況説明とタイトルからはじめる
これはね、ぼくが中学生の時の話なんですけどね、
クラスメイトにA 君っていう、家がめちゃめちゃ貧乏な子がいましてね。
A 君、年中半袖・短パンなんですよ。夏はいいですけど冬場なんか震えながら授業を受けているような感じで。
状況と登場人物を整理してみます。
- 中学生の時の話
- 登場人物は自分とA君
- A君の家はめちゃくちゃ貧乏
- A君は年中半袖・短パン
物語を展開させていくために必要な状況説明と登場人物の紹介から話し始めます。
話のタイトルは「クラスメイトの貧乏なA君」といったところでしょうか。
物語を展開させていく
ぼくA君の後ろの席だったんですよ。
もう、肩がガタガタ震えてて、
足なんかも貧乏ゆすりが止まらないんですよね。
さすがに「上着かそうか」って声かけたんですけどね。
「大丈夫。気にせんとって」って断るんですよ。でもね、振り向いた顔が顔面蒼白で鼻水垂らしてて。
ぼくはなんか「やばいなぁ」と思ってたんですね。
ここまでを整理すると、
- 自分はA君の後ろの席
- A君は調子が悪そう
- 自分は声をかけた
こうして、展開をつくっていきます。起承転結でいえば「承」にあたるところです。
文章のサビを作る
そしたら「バタッ!」っとA君が倒れて。
もうびっくりして。
「A君!A君!」って呼びかけにも、全く反応しないんですね。
その「バタッ!」っていう音でクラスのみんなも先生も駆け寄ってきて。
「A君!A君!A君!大丈夫!」って大騒ぎになったんですよ。
ここが起承転結の「転」になるでしょうか。物語で一番盛り上がりを見せるところです。
結末で裏切りをつくる
A君、39度の熱があって保健室に運ばれていったんですけどね、
ただね「バタッ!」倒れた時ね、
ぼくら生徒も先生も「ん?」と思ったけど、口に出せなかったことがあって、
短パンの腰の部分からパンツのゴムがちょっと見えたんですけどね、
女性物の下着履いてて、
なんかね、レースのフリル付いてたんですよ。
あとからA君に聞いたら、
パンツ買えなくてオカンの下着を履いてたって。
その日、Tバックだったから股間から冷えて熱が出たって。
構成を箇条書きにしてみる
この話の構成は次のとおりです。
- 【起】中学生の時の貧乏なA君の話
- 【承】A君は震えながら授業を受けている
- 【転】A君が授業中倒れた
- 【結】A君はオカンの下着を履いていた
このようになっています。
では構成を入れ替えて遊んでみましょう。
- 【転】A君が授業中倒れた
- 【結】A君はオカンの下着を履いていた
- 【起】中学生の時の貧乏なA君の話
- 【承】A君は震えながら授業を受けている
オチを最初に持ってくると、意外性や驚きはなくなってしまいます。
構成を入れ替えていくことで
- どの順番で読んでもらいたいか
- どの順番で読ませたいか
を考えて、作品の質を上げることが構成力だと思います。
感覚的に構成するのではなく、論理的にエッセイを構成していきましょう。
エッセイの構成を助けてくれる文章の型とは?
先ほどのすべらない話の例は、ちょっと特殊だったかも知れません。
文章にはいくつか起承転結のような「型」があって、その「文章の型」を頭に入れておくと、構成がしやすくなります。
- 起承転結
- 三幕構成(結論・本論・まとめ)
- PREP法・PASONAの法則
- 5W1H
これらの文章の型について紹介してきます。
起承転結を使ったエッセイの構成
いちばんオーソドックスな文章の型です。
いまさら説明する必要もないと思いますが、おさらいの意味も込めて。
- 起:舞台設定・登場人物の紹介
- 承:その舞台がどのような日常なのかを描写
- 転:とある出来事が起きる
- 結:ことの顛末
本当に簡単ですが、このような流れです。
さきほど紹介した「すべらない話」も、基本的には起承転結で構成されています。
三幕構成でエッセイを構成する
映画の脚本で使われる構成です。
三幕構成は、主に以下のセクションに分かれています。
- 序論
- 本題
- まとめ
序論で舞台設定を描く
文章の導入部分です。映画の冒頭のシーンを思い浮かべてみてください。
「どこの国の・誰の・どんな話なのか」このようなシーンから始まっているはずです。
エッセイも同じように、まずは舞台設定から描いていきます。
本論でストーリーを展開する
文章全体の核となる部分です。出来事やエピソード展開していきます。
- 感情の動きがある出来事が起こる
- どう感じたのか・自分はどう行動したのか
- どうなったのか
展開をつくっていくことで、読者の興味を惹いていきます。
まとめでは気づきや学びを入れる
文章の総まとめを書きます。
筆者の想いや気づき、このエッセイで読者に何を伝えたかったのかを示唆するような内容にします。
印象づけたい主張や想い・行動の提案でもいでしょう。
まとめ方で読後感が大きく変わってくるので、最後までしっかり描きます。
三幕構成は「2:6:2」の割合で書く
この三幕構成、アメリカの脚本家「シド・フィールド」による映画構成の手法です。
序論・本題・まとめの割合は「序論2」「本題6」「まとめ2」の割合で書いていきます。
5W1Hでエッセイの構成を考える
5W1Hで構成していくエッセイもわかりやすくていいですよ。
- いつ
- どこで
- だれが
- なにを
- どうして・どのように
- どう感じた
出来事やエピソードから「自分は何を感じたのか」を書くようにすると、エッセイっぽくなっていきます。
ぼくは出来事の視点をズラしたり、少し偏見なども交えたりしながらエッセイを構成します。
なるべく人とは違う切り口を探して書くことを心がけています。
エッセイの書き方について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
PREP法・PASONAの法則でエッセイを構成する
文章の型で調べると、PREP法やPASONAの法則をよく目にします。
これらの文章の型は、主にビジネス文書・セールスライティングで使われます。
結論から先に述べる文章の型なので、エッセイにはちょっと向いていないかも知れません。
ですが、そういった文章の型があることを知っておいて損はないでしょう。
エッセイ以外の文章には有効な構成です。
エッセイの書き出しはかなり重要
一行目で、読者の心を惹きつける文章を書けるかどうかで、最後まで読まれるエッセイかどうかが決まります。
これは言い過ぎでもなんでもなくて、ほんとうにそうなのです。
たとえば、お笑いのネタでいえば「つかみ」というものがあります。芸人はまず「ぼくたちはおもしろいですよ!」と客にアピールしてから本ネタに入ります。
落語で言えば「枕(まくら)」にあたります。
映画でも、中には主人公がとんでもない目にあってから始まるストーリーもあります。
これは、物語の序盤でインパクトを与えるためにそういったシーンからはじめるわけです。
エッセイを書く時どのシーンから描くかは、物語全体に影響するとても大事な要素なのです。
エッセイは読者の感情を揺らすように構成する
エッセイは読者の感情の起伏を意識して書くと構成することが楽しくなります。
たとえば、
物語の冒頭で主人公が死んでしまう物語。
なんだかグッと引き寄せられてしまいますよね。
読者の感情を意識した「上げて下げて」を繰り返すエッセイの構成
これはぼくが文章を書く時に意識していることです。
この構成が「絶対おすすめです!」とは言えないですが、ひとつの方法として参考にしてみてください。
わかりやすく箇条書きにしてきます。
- 冒頭で希望やゴールイメージを描く(ポジティブ)
- 問題点や苦難が待っている(ネガティブ)
- 解決策や打開策が見つかる(ポジティブ)
- 作戦を立てて挑戦する(ネガティブ)
- 簡単にはうまくいかないがそれでも諦めない(ポジティブ)
- 次第にうまくいき始める(ネガティブ・ポジティブ)
- 最大の試練が立ちはだかる(ネガティブ)
- クライマックス迎えて、あらたな課題へ(ポジティブ)
ポジティブとネガティブを交互に繰り返す
この構成を感情だけに焦点を絞って上から順にみていくと、
ポジティブとネガティブの繰り返しになっています。
- お笑い芸人に憧れる(ポジティブ)
- 親に反対される(ネガティブ)
- なんとか親を説得して上京する。芸人の世界へ足を踏み入れる(ポジティブ)
- しかしそんな簡単は売れない・面白い奴らがうじゃうじゃいる(ネガティブ)
- 挫折しかかるが、先輩のアドバイスに救われる(ポジティブ)
- 面白い芸人を決める大会が開催されるのでエントリーする(ポジティブ)
- 予選敗退で失意のどん底に、それでも諦めずに挑戦する(ネガティブ・ポジティブ)
- 予選は突破できが、それ以上は難しいと悟る(ネガティブ)
- 芸人はあきらめて、次の人生へ(ポジティブ)
これはぼくの芸人人生をモチーフにして構成してみました。
主人公に訪れる希望や苦難に読者は感情移入していきます。つまり感情が揺さぶられるわけです。
ずっと希望のままだとつまらないし、絶望のままだと暗くて読むのが辛くなります。
なので、バランスよく感情の起伏をつくって構成いていくわけです。
よかったら参考にしてみてください。
エッセイの公募にチャレンジしよう
エッセイの構成力を磨くには、エッセイをたくさん書くしかありません。
公募にチャレンジして賞を受賞すれば、エッセイストの道も開けるかも知れませんよ。
エッセイの公募を探そう
エッセイの公募は探すとたくさんあります。
企業が商品をアピールするために開催されるコンテストや行政が主催するコンテストなど、さまざまです。
公募ガイドでは、公募の検索が簡単にできます。
エッセイからキャッチコピー・ネーミングなど、言葉を扱う公募情報がたくさん掲載されています。
ちなみにぼくは、公募で累計10万円の賞金を獲得しました。
note(ノート)でエッセイを書こう
ぼくはnoteで介護をテーマにしたエッセイを書いています。
noteは文章コンテンツをメインにした、コンテンツプラットフォームで、エッセイや小説・コラムを執筆するクリエイターが多く登録しています。
芸能人や文化人も登録しています。
エッセイを有料記事として販売できる機能もあり、エッセイで収益を生み出すこともできます。
ぼくもいくつか有料記事の販売をして、購入いただきました。
エッセイを書きたいなら、noteで発信することをお勧めします。
構成次第でエッセイは面白くなる
日常生活で、エッセイのネタになるような面白い出来事はそうそう起こりません。
些細なこととか、繰り返す日常の中に気づきがあったりする程度です。
エッセイは、小さな心や感情の変化から、想像力や思考を膨らませて文章を書いていかなくてはいけません。
構成を上手に使えば、小さなエピソードが印象深い物語に変化することもあります。
それは嘘のエピソードではなく、まぎれもなく技術であり構成力だと思うのです。
素材をうまく調理する料理人のように、構成力を磨いて読者に面白く伝える工夫をしていきましょう。
そうすると、もっとエッセイを書くことが面白くなっていきます。