キャッチコピーの選び方を身につけよう
100本のキャッチコピーがあるとします。
その中で珠玉の1本を選んでくださいと言われたとき。
あなたは何を基準にキャッチコピーを選びますか?
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元芸人です。
キャッチコピーは書くことと同じくらい選ぶことも重要です。
一生懸命考えて書けば書くほど、キャッチコピーを選ぶことが難しくなります。ボツにして捨てることがもったいなく感じてしまうからです。
でも悲しいかな、最終的な一本を決めなくてはいけません。
「いいキャッチコピーは、ゴミ箱の中にある」という格言があるそうです。最高のキャッチコピーが選べるように自分の基準を持ちましょう。
ではキャッチコピーを選ぶコツについて一緒に考えていきましょう。
いいキャッチコピーとは何か
まず、いいキャッチコピーの定義を決めなくてはいけません。そうしなければ、いいキャッチコピーを選べないからです。
これはもしかしたらコピーライターによって違うかもしれません。
人を動かす言葉とは
ぼくが考えるいいキャッチコピーの定義は「人を動かす言葉」です。
人が動くとは次のようなことを意味します。
- 人の心を動かす(感情)
- 人の頭を動かす(脳の記憶)
- 人の体を動かす(行動)
人を言葉で動かすことが、広告(キャッチコピー)の役割であるといえます。
広告・キャッチコピーの目的を意識する
また、広告には広告主の目的があります。
- 商品・サービスを知って欲しい
- 商品・サービスに興味を持ってほしい
- 商品・サービスを好きになってほしい
- 商品・サービスを思い出してほしい
- 商品・サービスを買ってほしい
- 商品・サービスを人に紹介して広めてほしい
広告主の目的を無視したキャッチコピーも、いいキャッチとは言えません。
キャッチコピーはコピーライターのアート作品ではなく、あくまで広告主と生活者を結ぶ接点であると考えましょう。
いいキャッチコピーの具体例
人を動かすキャッチコピーには、どのような要素が含まれているのでしょうか。
- 新しい発見
- 知らなかった気づき
- 共感
- 納得
これらの要素があると、人は興味や関心を示します。では具体例と一緒に考えていきましょう。
「いいキャッチコピー」の具体例
年賀状は、
贈り物だと思う。岩崎 俊一氏
引用元:幸福を見つめるコピー 完全版
2007年 日本郵政 年賀状キャンペーン
あなたは、このキャッチコピーをどう感じましたか?
年の瀬、忙しい最中、年賀状を書くことは憂鬱な作業のひとつ。
とくに仕事上の付き合いなど、事務作業的な年賀状は面倒です。近年ではメールやLINE・SNSで挨拶する人も多く、年賀状を出す慣習は年々なくなってきています。
年賀状を「贈り物」と表現することで年賀状の価値を再発見し、年賀状の視点を変えたコピーだと思います。つまり「面倒な挨拶」から「相手に喜んでもらう贈り物」に価値を変えているキャッチコピーだと思うのです。
「相手に喜んでもらえるなら、今年は年賀状を書いてみようかな」
そうして、人の心を動かしています。
いいキャッチコピー選び方とは
それでは具体的に、キャッチコピーの選び方を考えていきましょう。
自分以外の人が見たらどう感じるかを考える
客観的な視点を持ち、俯瞰して考えることが重要です。
「自分以外の人が見たらどう感じるか」を常に意識する必要があります。
キャッチコピーを書いている時は自分の世界観に入り込んでしまっています。
書けば書くほど自分の書いたキャッチコピーが愛おしくなり、客観性を見失ってしまいます。
- 物理的に机から離れてみましょう
- 他の誰かになりきって考えてみましょう
ペルソナやカスタマージャーニーマップの考え方を用いて、人の心が動いたかを想像してみましょう。
他人にキャッチコピーの感想を聞く
他人の意見や感想は、客観的な目線に引き戻してくれます。ただ、不特定多数の大勢に意見・感想を聞くと意見が多様化しすぎるので注意が必要です。
コピーライティングの知識がない人に聞くのも要注意です。知識や経験のある上司や同僚がいいでしょう。そして他人からの意見・感想は参考程度にとどめておきましょう。
最終的な1本は、あなたが選んでください。
多数決でキャッチコピーを選ぶ
多数決をしてキャッチコピーを選びます。ぼくが通っていた「宣伝会議コピーライター養成講座」の授業でも行われていました。
いいキャッチコピーは、やはり多くの人の心を動かします。
キャッチコピーを寝かせる
書いた直後に選ばないようにしましょう。時間を置いて冷静さを取り戻してから選びましょう。
いいキャッチコピーが書けた直後は、ある種のカタルシスというかコピーライターズ・ハイとでもいいましょうか興奮気味です。ですが一晩明けてみると、さほどいいキャッチコピーでないことはよくあります。
クライアント(広告主)がそのキャッチコピーを選ぶのかどうか
クライアントは、最終的にそのキャッチコピーを選ぶのか。その視点でキャッチコピーを見つめます。
- 目的・ターゲットに沿っているか
- 他のプロモーションに溶け込む言葉か
- 掲載場所に合っているか
- 禁止ワードがないか
コピーライターに最終的な決定権はありません。
重要なのは、クライアントの目的・要望に応えているキャッチコピーかどうかです。
またキャッチコピーだけで広告が完結することはありません。プロモーションなどの広告戦略の一部です。
広告の流れを意識して、クライアントの視点に立ってキャッチコピーを選んでいきましょう。
ツッコミ(否定的な目線)を入れてみるキャッチコピーを見つめる
否定的で少し意地悪なツッコミを入れます。自分勝手なキャッチコピーを選ばないようするためです。
- 誇大表現になっていないか
- 口にすると恥ずかしい表現になっていないか
- 事実・根拠は間違っていないか
- ウソを語っていないか
自分なりの目線を鍛えましょう。
現場に行ってキャッチコピーを選ぶ
現場に出向いてキャッチコピーを選ぶ方法です。キャッチコピーだけで完結する広告はありません。
- ポスター
- 新聞広告
- 雑誌
- SNS
- 動画
キャッチコピーは、写真やグラフィック・イラスト・映像などが合わさって完成します。現場に行くと広告が掲載されるイメージが湧きます。
声に出してキャッチコピーを読む
声に出して読んで、自分の耳で聞いてみてください。
いいキャッチコピーは声に出して読みたくなります。頭だけで考えていると、他人が「どのように読み」「どのように感じる」が掴みにくいのです。
- 読みやすさ
- 耳障り
- テンポ
- 息継ぎ
- 読後感
声に出して恥ずかしいキャッチコピーなら、他の人も読んでいて恥ずかしいのです。自分の心に響かない言葉なら、他の人の心にも響くことはないでしょう。
広告賞の審査員になったつもりでキャッチコピーを選ぶ
広告賞の審査員になったつもりでキャッチコピー選びます。
100本並んだキャッチコピーの中で、自分の心に引っ掛かる言葉を選んでいきます。そしてなぜ、そのキャッチコピーが目に飛び込んでくるのかを分析します。
そのキャッチコピーが世に出るイメージを持つ
広告は完成すると世の中に出ます。そのキャッチコピーは多くの人の目に触れます。
街角・電車広告・新聞広告・看板・ポスター・SNSなど、さまざまな場面で生活者に届きます。
そのキャッチコピーは自信を持って素晴らしいと言えますか?
胸を張って「自分が書いたキャッチコピー」と言えますか?
キャッチコピーは自分自身を表現したものです。自信の持てる言葉に出会うまで書き続けて、いいキャッチコピーを選びましょう。
あなたのキャッチコピーを埋もれさせないために
キャッチコピー100本の中には、駄作もあれば傑作になりうる原石もあります。いいキャッチコピーを選ぶ基準がないままだと、知らないうちに名作を捨ててしまうこともあります。
あなたのキャッチコピーは、あなたが拾っていかなくてはいけないのです。
コピーライターはそれぞれ独自の基準を持っています。その基準はキャッチコピーを書いた数・選んできた数で醸成されていくと思います。
なにか、あなたのヒントになれば嬉しいです。