いいキャッチコピーには課題解決がある
キャッチコピーはなんの目的で書きますか?
商品を売るために書きますか?
サービスを知ってもらうために書きますか?
キャッチコピーは広告の手法なので、クライアント企業が抱える商品・サービスなどの課題を解決する役割が大きいかと思います。
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元芸人です。
クライアントが抱える課題には、次のようなことがあると思います。
- 認知を広げたい
- 興味をもってほしい
- イメージアップをしたい
- クリックしてほしい
- 問い合わせをして欲しい
- 買って欲しい
- 思い出してほしい
- 誰かに伝えてほしい
対照は商品やサービスであったり、企業そのものであったり様々です。
クライアントは「生活者の能動的な行動を促す」ことを、コピーライターやキャッチコピーに期待しているのではないでしょうか。
課題解決のあるキャッチコピーを書くために、どんな視点が必要か一緒に考えていきましょう。
人の心や感情を動かすキャッチコピーが課題解決につながる
問題に対し課題解決をするには、人を動かさないといけません。
たとえば不登校の中学生に学校に行ってもらうに、あなたはどんな言葉をかけますか?
無理やり引っ張り出しても、難しいでしょう。
人の内面に変化を起こす
人の内面に変化が起こらなければ行動は変わりません。では人はどんな時に内面に変化がおこるのでしょうか。
- 新しい発見があった時
- 納得できる説明があった時
- 共感できることに出会った時
- 心をくすぐるユーモアに出会った時
これらは人の心や感情を動かすきっかけになり、人の能動的な行動を促します。
内面の変化が商品購入につながる
商品やサービスを売ることも一緒でしょう。興味や関心を持ってもらわなければ、購入につながらないのです。キャッチコピーは、人の関心を惹きつけることが大きな目的だと考えています。
文庫本のキャッチコピーを考えてみる
文庫本を例に、課題解決のあるキャッチコピーを考えてみます。
まずは課題を明確にしよう
課題解決を考える前に、まずは問題を明確にする必要があります。
文庫本の問題点とはなんでしょうか。文庫本が売れなくなった原因はなんでしょうか。
- 電子書籍の登場で文庫本が売れなくなった
- 動画サービスやゲームなど、娯楽の多様化で文庫本が選ばれなくなった
- 本を読む人が減ってきている
- 本が売れなくなった
- 時代の変化で書店の閉店が相次いでいる
あらゆる視点から問題点をあぶり出していきましょう。
課題解決を考える
考えた課題に対し、解決策を考えていきます。どんなキャッチコピーを書いたら書店で文庫本を買う人が増えるかを考えていきます。
ひとつのアプローチとして、文庫本と電子書籍を比較してみました。
- 文庫本は、充電を気にしなくていい
- 文庫本は、本棚に並べると壮観(電子書籍は場所をとらないが、味気ない)
- 文庫本は、貸し借りしやすい
- 文庫本は、書き込んだ手書き文字が思い出になる
- 文庫本は、しおりを選ぶことが楽しい
- 文庫本は、売れる
- 文庫本は、読み終わったら人にプレゼントできる
- 文庫本は、西日焼けする
- 文庫本は、枕にできる
文庫本のメリットを中心に考えてみました。
この中に文庫本特有の「発見」「納得」「共感」「ユーモア」があれば、キャッチコピーの切り口やアイデアとして発想を広げていけます。
生活者をイメージする
「やっぱり、文庫本っていいよね」
あたなが思い浮かべた生活者が、考えた課題解決で内面に変化が生じたら、キャッチコピーとして課題解決があるといえるのではないでしょうか。
文庫本の名作キャッチコピー
想像力と数百円
糸井重里さん 新潮社(1984)
糸井重里さんの代表作ともいえるキャッチコピーです。ぼくの大好きなキャッチコピーです。
読書の価値は人間の想像力を掻き立てることにあります。文庫本はたった数百円で、想像力を磨いたり広げたりできるものだと、価値の再発見を提示していると思います。
このキャッチコピーが課題としているのは、本を読まなくなった人たちへ、どうしたら本の価値を感じてもらえるかだと思います。
描写だけのキャッチコピーは書いてはいけない
逆に課題解決のないキャッチコピーについても考えてみましょう。そうすることで課題解決の重要性がより理解できていくと思います。
缶ビールの描写だけだと人の心は反応しない
描写だけのキャッチコピーとは、機能説明や状況説明・情景を描いただけの言葉です。
缶ビールのキャッチコピーを考えるとします。
- キレのある辛口
- 麦100パーセントの味わい
- プリン体0!糖質カット!
- のどごしが爽やか
- 春味の季節
これらの言葉は、缶ビールの味や原材料・特徴を説明しているだけに過ぎません。
「ふーん、そうなんだぁ」
というような感想で終わってしまいます。
すでに価値が定着している
なぜ缶ビールは、このようなキャッチコピーのCMが流れるのでしょうか。
それはアルコール飲料の価値は、あらためて説明しなくても浸透しているからだと思います。仕事の後の息抜きや気分転換、コミュニケーションを円滑にするなど、缶ビールの価値を今更説明する必要がないですよね。
コモディティー化(一般化)された商品は、機能や性能の差別化でしか、価値を伝えられなくなってしまっているのです。新商品の目新しさでしか興味を引けなくなっています。
ただ、ノンアルコールビールなどの商品は、問題定義と課題解決はまだまだあると思っています。
ベネフィットのあるキャッチコピーは課題解決につながる
課題解決とは、見方を変えればベネフィットがあることです。
ベネフィットとは「商品(缶ビール)を手にすることで、もたらされる価値・生活の豊かさ」のことです。
缶ビールのベネフィットを考えてみる
みなさん、ビールはどんな時に飲みたくなりますか?
- 仕事を頑張った自分へのご褒美
- 嫌なことがあり、気分を変えたい時
- お風呂上がりにシュワっとしたい
- 仲間とのコミュニケーションを円滑にするため
これらは生活者・消費者の具体的な日常のシーンです。悩み・快楽・などの感情を含んでいて、課題を解決する糸口になっています。
生活者の本音(インサイト)を考えてキャッチコピーを書こう
キャッチコピーを考えていると、商品・サービスの特徴やメリットばかりを伝えるキャッチコピーになりがちです。
生活者の視点を見失ったキャッチコピー
広告対象の商品・サービスの特徴やメリットを知れば知るほど感情移入し、それらを伝えたい気持ちになってくるのです。
ですが生活者が知りたいのは、商品・サービスの特徴ではなく「その商品・サービスを使うことによってどんな課題が解決され、どんな豊かな生活を送れるのか」が知りたいのです。
広告主の視点でキャッチコピーを書かない
広告主側の視点に立ち過ぎてしまうと、生活者との距離が遠くなり・接点も無くなっていきます。そうなると生活者の本音の課題(インサイト)がわからなくなってしまうのです。
コピーライターの役割は、生活者と広告対象の橋渡しをすることです。
キャッチコピーは、生活者の困りごとを解決するきっかけになると思って、アイデアを考えていきましょう。