キャッチコピーは短い文字数で書こう
人は、一度に多くの情報をぶつけられるとイラッとします。
ちょっと比較してみてもらえませんか?
「元芸人です」
と、
「20代の頃東京を拠点に活動していたが上手くいかず諦めた元芸人です」
どちらも言いたいことは「元芸人」です。
どちらが聞きやすかったですかね?
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元芸です。
アメリカニューヨークに、オグルヴィ社という広告会社があります。現代広告の父と呼ばれた「デイヴィッド・オグルヴィ」のDNAを受け継ぐ広告会社で、数々の広告賞を受賞している世界的に有名な企業です。
そこに所属しているコピーライターは「コピーは11文字がいちばん最適だ」と言っていたそうです。
たしかに11文字は、かなり限定的な考え方だなという気はしますよね。でもこの話、ぼくがコピーライター養成講座に通っていたときに現役コピーライターの講師から聞いた話なのです。
つまりキャッチコピーは短く書くという考え方は、コピーライター全員に共通する基本的な考え方といえます。
短くてシンプルなキャッチコピーは、
- 意味が速く伝わる
- 人の記憶に残りやすい
- 口コミで広がりやすい
キャッチコピーに、これらの効果があると考えています。
キャッチコピーを書き始めると、なるべく多くの情報を伝えたいと思うあまり言葉が長くなりますよね。でも情報を詰め込み過ぎたキャッチコピーは、読み手の集中力を奪いインパクトを薄くしてしまうと思うのです。
世間の人はキャッチコピーや広告がキライ?
そもそもなんですが、あなたは広告が好きですか?
ぼくは広告嫌いです。テレビCMを好んで見たことはありませんし、YouTube広告はほとんどスキップしますし。
いや、もちろんキャッチコピーの勉強のために見ることはありますよ。そういった意味で広告は好きですよ。
大前提として広告は見られていない
ぼくがコピーライター養成講座に通っていたときに、講師の方達から耳がタコになるくらい言われていたことがあります。
広告は見られていない
ということです。そもそも世の中の人は、広告に対してネガティブなイメージを持っているということ。
ぼくやあなたが、時間を使い・頭を使い、寝ずに考えたキャッチコピーは、他人からしたら鬱陶しいのです。
広告・キャッチコピーは鬱陶しい?
もう一度聞きますが、あなたはYouTubeの広告を最後まで見る気になれますか?
SNS広告って邪魔くさいですよね?テレビのCM・ラジオのCMの時にトイレに行っていませんか?Webサイトに表示されるバナー広告。記事を読むのに邪魔ですよね。
世の中、広告だらけですね。
人は広告を見たいわけじゃなく。コンテンツが見たいわけです。
コンテンツは能動的に見るのも、広告は受動的に見せられるもの。
この認識をもつことが、短いキャッチコピーを書く重要性に気づかせてくれました。
広告自体がコンテンツになっている広告は読まれる
え?だとしたら、読まれる広告ってないの?
あると思います。それは、広告自体がコンテンツになっている広告です。
いちばんわかりやすい例が、求人広告・物件情報などの広告。つまり相手が積極的に何か探している場合は読まれます。
タレントCMも見られる広告
芸能人やタレントを起用したCMも、見られる広告です。
好きなタレントCMに起用されていれば、当然のごとく対象の商品にも好感を抱くでしょう。好きなタレントが身につけているブランドは欲しくなりますよね。
商品自体に興味をもってもらうより、タレントの興味を使ったほうが高い宣伝効果があるのです。
タレントや芸能人のテレビCMのギャラが高額なのはそういった理由なのですね。
タレントが好感度を気にする理由
余談ですが不祥事を起こしたタレントや芸能人が謝罪会見を開く理由は、イメージや高感度を気にしている企業、いわゆるスポンサーに向けての謝罪です。
キャッチコピーは端的なほうがいい
ここまで、広告は見られていないということを解説してきましたが、そういった視点がなければ、人の関心・興味を惹きつけるキャッチコピーには辿りつかないと考えています。
短くてインパクトのあるキャッチコピーを目指していきましょう。だからこそキャッチコピー奥が深いとも思うのです。
なぜキャッチコピーの文字数は長くなってしまうのか
今度は逆に、なぜキャッチコピーは長くなってしまうのかについて考えてみたいと思います。
キャッチコピーで伝えたいことがありすぎる
いちばんの理由がこれではないかと思います。
ひとつの商品・サービスに対して複数のことを言ってしまうパターンです。対象への愛情が深いあまり、あれもこれも詰め込んでしまいたくなるわけですね。
「イケメンでやさしくておもしろくてお金持ちで頭がいい」
この人の特徴的はなんでしょうか?
「世界でいっちばんお金持ち」と言ったほうが、短くてインパクトがありますね。
クライアントの自慢話みたいなキャッチコピー
クライアントからすれば、できる限り多くのメリットを消費者に伝えたいと考えるでしょう。開発に時間をかけた製品であればなおさらです。
- 性能
- 利便性・機能性
- 価格
- 他社製品との比較
- デザイン性
これらのことすべて、キャッチコピー詰め込めますか?
「通気性があってどの商品よりも安いオシャレでカッコいい洋服」
これはもう、企業側のエゴや押し付け・自慢話でしかありません。企業側の視点で書かれたキャッチコピーは「当社の商品はスゴイですよ」と自慢している感じになってしまっています。
自慢話に好感を持つ人はいません。これは世の常です。
生活者・消費者が求めるのは、商品・サービスを手にしたことで得られる「生活の豊かさ」です。つまり商品・サービスの価値(ベネフィット)が知りたいのです。
生活者は、押し付けがましい広告・キャッチコピーを嫌います。自慢話広告は逆効果になってしまう危険すらあるのです。
自分に酔ったキャッチコピーも長くなりがち
とくに詩的なキャッチコピーに多い印象です。キャッチコピーは作品ではなく広告です。
不必要な接続詞・意味や効果のない体言止めなど、技術にこだわると無意識にキャッチコピーは長くなると思います。自分の世界に入り込んでしまうことも、キャッチコピーを長くする原因のひとつではないでしょうか。
キャッチコピーを短い文字数で書くコツとは
りんごを例に、キャッチコピーを短く書く方法を考えていきましょう。
訴求点はひとつだけにする
キャッチコピー制作では、次の考え方を大切にします。
- What to say(商品・サービスの何を)
- How to say(どう言うか)
What to sayは訴求点やメリット、いわゆるキャッチコピーの切り口です。How to sayは表現です。りんごの訴求点・特徴を考えてみましょう。
- 赤い
- みずみずしい
- 甘い
- 体にいい
- おやつになる
ほかにも、値段や産地などの訴求点もあるでしょう。
キャッチコピーを短く書くにはまず、What to sayひとつに決めることです。そしてWhat to sayを工夫していきます。
商品名を連呼するテレビCMは印象に残る
テレビCMで、メロディーに乗せて商品名を連呼するCMをみたことはありませんか?
これは商品名を印象づけ・認知拡大のために使われる広告手法です。
具体的には「PayPay(ペイペイ)」「LINEモバイル」など、わかりやすいかと思います。あれは、商品名を覚えてもらうことだけに集中しているのです。そして人気タレントや芸能人を起用し、興味を惹きます。
- 新サービスだから、商品名を覚えてもらう
- メロディーに乗せて、脳に残りやすくする
- 人気タレントを起用して、注目を集める
これも短いキャッチコピーといえるでしょう。
短い文字数で課題解決のあるキャッチコピーをめざそう
想像力と数百円
糸井重里さん
これは、糸井重里さんの書いた文庫本のキャンペーンのために書かれたキャッチコピーです。
たった数百円で人間の想像力は磨けるという、文庫本の価値を何倍にも押し上げているキャッチコピーだと思います。
短いキャッチコピーはSNSで拡散されやすい
広告は「口コミ」の力も重要です。
広告・キャッチコピーを広げるために、SNSを使わないことはありません。
SNSの「#(ハッシュタグ)」はもはや、キャッチコピーといえるでしょう。シンプルでインパクトのあるハッシュタグのほうが拡散されやすいと思います。
著者の谷山さんは、口コミのことを「流通力」と表現されています。「拡散力」と言い換えてもいいかもしれません。
人の心に刺さるキャッチコピーはシンプルで短い
キャッチコピーを短く書くことは、簡単ではありません。
キャッチコピーは書いていると、伝えたい想いが強くなりどうしても長くなってしまうものです。逆に言葉を削りすぎて意味の通らないキャッチコピーになってしまうこともあります。
本質をついた言葉は、短くてシンプルなのだと思います。