目標とは何だろうか。
目標をマラソンで例えるなら「ゴール地点」じゃないだろうか。
目標がないということは、42.195キロ走り切ってもゴールできない延々と続く終わらないマラソンじゃないか。
地獄だ。走りきれるわけがない。
ゴールが決まっていると、いろんなことが見えてくる。
いまどこにいて、
どんな走り方で、
どのくらいの速度で走って、
どこまで走り切ったらゴールなのか。
そして、なぜ走るのか。
逆にゴールが決まっていないと、自分の現在地がわからずに迷ってしまう。ゴールがあるから安心してマラソンが走れるのだ。
人生には、目標が必要というわけだ。
SMARTの法則は、目標設定を手助けしてくれるフレームワークだ。
目標設定の考え方において、時代遅れなんてあるだろうか。こういった普遍的な考え方は、時代に合わせて使うことが大切だと僕は考えている。
人は目標がないと、自分と他人を比較してしまう。
人は目標があると、過去の自分を越えようと努力する。
僕は、目標のある人生を送りたい。
なぜSMARTの法則は時代遅れと言われるのか
とはいえ「SMARTの法則は時代遅れ」といわれる理由は解決しておこうと思う。
目標設定の考え方について調べると、どうやら「FASTの法則」という法則が関係して、SMARTの法則が時代遅れといわれているようだ。
FASTの法則は、SMARTの法則と同じく目標設定を手助けしてくれるフレームワークで、SMARTの法則よりも後に考案されている。そのためにSMARTの法則は時代遅れといわれている。
SMARTの法則とは
SMARTの法則は、コンサルタントの「ジョージ・T・ドラン氏」によって、1981年に提唱された法則だ。
- 「S」Specific(具体的)
- 「M」Measurable(測定可能)
- 「A」Achievable(達成可能)
- 「R」Relevant(関連性のある)
- 「T」Time-bound(期限のある)
それぞれの単語の頭文字をとって「SMARTの法則」となる。
Wikipediaによると、
主にビジネスの現場で用いられている法則です。プロジェクトマネジメントや従業員の業績管理・能力開発など、具体的な目標設定の基準を示す目的で使用されています。
(参考 : Wikipedia)
FASTの法則とは
FASTの法則は、マネジメントの専門家「Donald Sull氏」「Charles Sull氏」によって、2018年に提唱された法則だ。
- 「F」Frequent(ゴールは頻繁に議論される)
- 「A」Ambitious(不可能ではない範囲で野心的)
- 「S」Specific(具体的、指標とマイルストーンで計測)
- 「T」Transparent(透明性)
SMARTの法則とおなじく、それぞれの単語の頭文字をとり「FASTの法則」となる。
FASTの法則は野心的な目標設定を基準にしているフレームワークだ。夢のように壮大な目標設定をすることが特徴で、自分の可能性を限界まで引き上げてくれる。
「SMARTの法則」と「FASTの法則」の使い分け
確かにふたつの法則は似ている。しかし微妙にニュアンスが違う。
SMARTの法則は短期的な目標設定に使う
目的・達成期限・達成基準・数字などを盛り込み目標を具体的にしていくメソッド。
綿密な計画をつくることに向いていると思う。短期的な目標設定に使用するのがいいだろう。
FASTの法則は長期的な目標設定に使う
未来に対してのビジョンを描いたり、野心的に考える時に使用するメソッド。長期的な目標設定に使用するのがいいだろう。
つまり目標の種類によって、法則を使い分けることが大切ということだ。
僕の芸人活動が失敗に終わった理由は、目標がボンヤリしていたから
ここで少し過去の失敗を振り返ってみる。
僕は20代からの10年間、東京で芸人活動をしていた。吉本興業の所属芸人として漫才コンビを組み、舞台でネタをしていた。
テレビで活躍する芸人になること、芸人だけで食べて行くことが夢だった。
結局、まったく結果が出ず、30歳で芸人はあきらめることになる。
なぜ芸人活動は失敗したのか。
当時の自分には何が足りなかったのか。
芸人としての具体的な目標がなかった
失敗した原因をひとことで言えば「具体的な目標がなかった」からだと思う。
「ダウンタウンみたいになりたいなぁ」
「テレビでレギュラー番組もちたいなぁ」
子供が夢を語るレベルで、ゴールを設定していたことが原因だろう。
このボンヤリとした「目標とは言えない目標」をゴール地点にしていたから、年齢という期限が先にゴールしてしまった。
目標から逆算して行動を考えなくてはいけない
テレビで売れるためにはどんな努力が必要だったのか。具体的な行動に落とし込んで実行していくことが必要だった。
- 経験を積むために月に〇本は舞台で漫才をする
- 毎月1本新ネタをつくる
- 人脈を増やすために先輩の誘いは断らない
決してこれらが正解とは限らないけれど、小さな失敗を積み重ねて行くことが成功への道になる。行動を具体的にして分析や修正を繰り返していれば、結果は変わっていたかもしれない。
当時からSMARTの法則を知っていればなぁと、悔しくなった。
【具体例】SMARTの法則で目標を言語化する
さて、SMARTの法則の具体的な使い方について考えていく。
SMARTの法則は、5つの単語の頭文字が由来だった。
- 「S」Specific(具体的)
- 「M」Measurable(測定可能)
- 「A」Achievable(達成可能)
- 「R」Relevant(関連性のある)
- 「T」Time-bound(期限のある)
主にビジネスの場面、組織や社員の目標設定に使われる法則だが、理解しやすくするためにプライベートの目標設定をテーマに掘り下げて考えていこうと思う。
テーマは「ダイエット」にしよう。
抽象的な目標を、徐々に具体的な目標に変えていくプロセスを考えてみる。
「S」Specific(具体性)目標を具体的にする
夏までに痩せる
大抵の目標はこんな感じじゃないだろうか。一見、しっかりとした目標に思えるけれど、この目標は抽象的でボンヤリとしている。
- 夏までとは何月何日なのか?
- 何キロ体重を落とせば痩せたといえるのか?
- 目指すべき体型はどんな人物像か?
これらの具体的な要素を加えてみると次のようになる。
3か月後には5キロ痩せて、タレント「〇〇さん」のような体型になる
期限や数値を加えると目標は具体的になる。言語化した目標が頭の中で映像化できるかどうかも重要になってくる。
つまりダイエットに失敗している人のほとんどは、目標がボンヤリとしているわけだ。
「M」Measurable(測定可能)数値目標を設定する
Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれてヨーロッパのセリエAに入団します。そしてレギュラーになって10番で活躍します。一年間の給料は40億円はほしいです。
(※一部を抜粋)
これは元日本代表サッカー選手「本田圭佑」さんが、小学校の卒業文集に書いた将来の夢。文書中に「10番」「一年間」「40億」と数字が入っている。
実際にヨーロッパのサッカーリーグ・セリエA・ACミランで、背番号10番をつけて活躍した。
プロ野球選手「大谷翔平」さんのマンダラチャートも有名な話だ。
大谷選手が岩手県・花巻東高校1年生の時に書いたマンダラチャートには、目標を達成するための具体的な行動が事細かく設定されている。中央に配置された大目標を囲むように、中目標・小目標が具体的に書かれている。
マンダラチャートの他にも、マインドマップを使うのも有効だろう。

彼らにとっては壮大な夢ではなく、具体的な目標だったのだ。
目標に数字を入れることで評価基準が生まれ、進捗率や達成率の測定・改善・修正・分析がしやすくなる。
3か月後には5キロ痩せて、タレント「〇〇さん」のような体型になる
先ほどの目標にも数値が入れてある。ひと月単位で数値を見直しながら進めていくことが大切だ。
「A」Achievable(達成可能)現実的な目標設定にする
ひと月で体重を10キロ落とす
この目標は現実的に可能だろうか。
断食をしハードな運動を毎日続けたら、もしかしたら可能かもしれない。でもその代償として健康被害があるだろう。
無謀な目標設定は「本当に達成できるのだろうか?」と、不安や焦燥感に駆られ逆にモチベーションを下げてしまう。
なぜ無理な目標を設定してしまうのか
誰もが目標を設定する時は、モチベーションが高い状態で考えるからだ。だから無理な目標設定をしてしまう。
新しいことを始める時は誰しも、希望に満ち溢れワクワクしている。そのことが原因で冷静な思考や判断ができず、無理な目標設定をしてしまうわけだ。
目標を決めたら少し期間を空けるなどして、見直し・信頼できる人に聞いてもらうなど、客観的な視点を持つことが大切だ。
「R」Realistic(関連性のある)目的との関連性を確認する
「何のために」痩せるのか。
目標は目的を意識することが重要だ。
目的を達成するために目標が存在する。目標は目的の下に位置しているチェックポイントなのだ。
ダイエットに取り組み、痩せて得られるものは何か。
痩せてどんな感情を得ることができるのか。
目標に「なぜ?」を問いかけて目的を明確にする
目標に対して「なぜ達成したいのか?」を5回問う。すると本質的な動機、つまり目的が見えてくる。
この方法は「トヨタ自動車」で行われている「カイゼン」方式だ。
トヨタ自動車では、問題・トラブルが起こった時、本質的な原因を徹底的に洗い出すために「5回のなぜ?」を問い続ける社内文化がある。
「痩せたい」という目標に対し、カイゼン方式で「5回のなぜ」を問いかけてみる。
- 自分の見た目をよくしたい
- 今よりファッションを楽しみたい
- 仕事のパフォーマンスを上げたい
- 健康になりたい
- 自分に自信を持ちたい
痩せることで得られることは、体重が落ちることだけではない。体重が落ちることによって得られるメリット、これらが目的になってくる。

目的のために目標はあるべきで、目的がない目標達成は、目標を達成したとしても疲労感や虚しさが残ってしまう。
誰のために達成したい目的・目標なのか
「〇〇した方がいいよ!」と他人から言われて始めたことで、努力が長続きした覚えがあるだろうか。
目標は絶対に自分で決めなければならない。
他人の意思や周りの環境によって決められた目標は、目標達成できなかった時の言い訳を生み出してしまう。
「〇〇さんに言われたから、、」
「私が本当に望んでいることじゃなかった、、」
「あの人を喜ばせたいために頑張っている訳じゃない」
他人せい・環境のせいにしていては、成長できるわけがない。
さらに「あの人と比べて、、私は、、」などのネガティブな感情や嫉妬を生み出してしまう。他人と自分を比較しても意味はない。
目標の達成は自分のためだ。だから自分で考えなくてはいけない。
「T」Time-related(期限のある)
夏休みの宿題は結局、次の始業式までにはやらないといけない。
期限があるから物事は終わりを迎えられる。
でもどうせなら、焦らずに計画的に物事を進めていきたい。
期限を決めることで、期日までに目標を達成するにはどうすればよいか、具体的な方法や手段を考えるようになる。
目標達成を先延ばしにしてモチベーションの低いままダラダラと続けても成果はでない。
結果から逆算してプロセスを考えるクセをつける
- いつまでに
- 何を達成したいのか
結果と締め切りが決まると、自然に必要なプロセスを考えるようになる。この逆算思考は「バックキャスト思考」「未来思考」といわれる。企業コンサルティングでも使われている手法だ。
- 毎日30分運動をする
- お菓子を食べない
- 外食は控え野菜中心の食事にする
- 毎朝、体重計で体重を測る
これらの小さなプロセスの積み重ねが、目標達成の道しるべになっていく。
SMARTの法則で立てた目標を達成するための工夫
目標達成するには継続的な努力・習慣化は欠かせない。いろいろな方法や工夫を考えていこう。
習慣化の仕組みを理解する
行動を習慣化するには、ある一定の期間、行動し続けることが重要だ。
目標達成に繋がる行動を習慣化できれば、ゴールに近づくスピードは速くなる。そのためには、人間の無意識、いわゆる潜在意識について知っておく必要がある。

目標を客観的な視点に置いてモチベーションを管理する
目標を明示的にに示しておくことも重要だ。常にゴールを意識することが、継続的な努力の源泉になる。
アファメーションが有効な手段だ。アファメーションとは、理想の現実を引き寄せるポジティブな宣言のことだ。人間の思い込みの力を利用する方法を知っておいた方がいいだろう。

目で見る・耳で聞く・他人に話して背中を押してもらうなど、思考を自分の頭の中から取り出す。自分の外側に目標を置くことで客観的な判断ができるようになる。
目標設定・計画は見直と修正をくり返す
目標に向かって努力している最中でも、行動に違和感を感じたら、その都度、目標の調整や修正をする。
行動し目標に近づくにつれて視野や視点が広がってくる。当然、見える世界も変わってくる。
自分に甘い条件にする・根本から目標を変えてしまう、これらは間違った修正だが、中間目標や期限の見直しなどは積極的にやっていい。
なぜ目標が決まると毎日が充実するのか
僕は、芸人を辞めてから2年間くらい、生きる目的を失っていた。
何をしていいかわからず、何が自分に向いているかもわからず、死んだように生きていた。
20代、まともに社会に出たこともない人間にとって、30歳からの一般社会はあまりにも分厚い壁があった。
芸人をやめて最初にできた目標は「正社員になる」だった。心底達成したい目標ではない。世間体を気にした目標だった。
それでも目標が決まったことで、行動する理由ができた。ハローワークに行って、ビジネス関連のセミナーを受け、自己啓発本などを読み漁った。
その頃からかもしれない、日々が充実していったのは。目標ができ、目的を見つめるようになった。
目標は具体的じゃないと現実化しにくい。だからそSMARTの法則は、目標設定において有効な手段だと思う。
後悔のない人生を送るには、目標が大事だ。