第60回宣伝会議賞の作品と制作過程の振り返り
第60回宣伝会議賞にチャレンジしました。
キャッチコピーを書き始めた時期が遅すぎました。普段からアイデアはメモしていたものの、実際にキャッチコピーを書き始めたのは応募期限の2日前。
こんにちは、のざき寿(ひさし)といいます。元芸人です。
やっぱり掛けた時間・書いた本数は重要ですね。応募した作品と制作中に考えていたことを整理したいと思います。
他人の思考を垣間見る好奇心で、お楽しみくださいませ。
チャレンジしたキャッチコピーの課題
今回チャレンジした課題は、SOMPOケアさんの「介護」をテーマにした課題です。
ぼくは現在、近所の介護施設でデイサービスのパート職員として働いています。
日々、後期高齢者・障害のある方・認知症高齢者の方々関わり、仕事をする中で感じたこと・発見したことを、キャッチコピーで表現しようと考えました。
今回の宣伝会議賞、全部で40の課題があります。
今回もひとつの課題だけに集中してキャッチコピーを書きました。自分が知っている業界だけに特化した方が、勝率が高くなると考えたからです。
SOMPOケアさん「介護」の課題
介護職のイメージを向上するためのアイデア
第60回 宣伝会議賞
日本は2025年を境に超高齢化社会に突入します。2025年問題といわれ、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になるのです。それに伴い介護人材の不足が課題になっています。
SOMPOケアさんが課題としているのは、介護職を目指したくなるようなキャッチコピーを考えることです。
応募したキャッチコピー
お節介はお節介でしかないのかもしれないですね。
でも、自分から要望を伝えることが苦手な高齢者もいます。職員が忙しくしているときなどは遠慮して何も言わない方がいます。そんなとき、お節介な人って積極的に高齢者と関わっていくので頼もしく感じる時もあると思うのです。お節介が武器になります。
優しさって、どうしたら身に付くのでしょうか。介護の仕事を通じて優しさや思いやりを磨けると思って考えました。
介護職は、体も心も持ち上げて高齢者を支えていく仕事だと思って考えました。
介護の現場では「ありがとう」を耳にすることが多いです。普段使う言葉や聴く言葉によって人間は成長していくものだと考えて、このキャッチコピーを書きました。
人に優しくできた時、自分の優しさに気づくことができるのではないでしょうか。ぼくはこのキャッチコピーがお気に入りです。
高齢者の方に、そう言われているように思うことがあります。人生の学びは、自分より先の人生を生きている人から学ぶことも多いのです。
身近にいる人から学ぶ方が、リアリティーがあっていいのではないかと思って考えました。
高齢者の目線に合わすには、少しかがまないといけません。頭を垂れる稲穂のように、腰の低い人になれると思って書きました。
聞き上手な人は、誰とでも仲良くなれます。高齢者の方はいろんな話を聞かせてくれるので、コミュニケーション能力を磨くには介護職はもってこいの仕事だと思うのです。
転倒リスクのある高齢者が椅子から立ち上がったとき、介護職の人間は咄嗟に駆け寄ります。介護職の瞬発力はすごいです。何事にも躊躇しない力強さを表現しようと思いました。
キャッチコピーの制作工程を整理してみる
ここからはキャッチコピーの制作工程を整理しながら、思考のプロセスを考えていきたいとおもいます。
ターゲットは誰か
今回のターゲットに設定したのは、介護・介護職に対してネガティブなイメージを持っている人たち。
介護・介護職は「3K(キタナイ・キタナイ・キケン)職」のイメージが根付いてしまっています。古臭い考え方だとは思いますが事実です。そのことを物語っている具体例が、友人や知人に「介護の仕事をしています」というと「大変ですね」と返ってきます。
そして人気のある職業とも言えません。賃金も他の業種にくらべて高くありません。肉体的にも精神的にもハードです。それは、ぼくが実際に介護業界で働いていて感じたことです。
でも、介護の仕事は視点を変えると、人の人生に関わる尊い仕事で、感動を生み出すとてもクリエイティブな職業だと思うのです。
キャッチコピーのゴール
ターゲットに対し、介護のポジティブな視点を伝えること。これが今回のゴールでした。
介護職員をしていて体験した出来事・感じたことで、ポジティブなことを見つけることに意識を向けました。
キャッチコピーを考える上で意識していた視点
具体的には、次のような視点に意識を集中してキャッチコピーを考えていきました。
- 何をうれしいと感じるか
- 何を学んでいるか
- どんなことに感動したか
- どんなことを悲しいと感じたのか
キャッチコピーの切り口
- 介護職は人生を学べる
- コミュニケーションが上手になる
- 倫理観を見直すことができる・学べる
- 介護に対する将来の不安が減る
- 「ありがとう」がいっぱい聞ける・言える
視点を変えてキャッチコピーの表現を変えてみる
語り口を変える・主語をかえることでもキャッチコピーのニュアンス変わってきます。
- 自分の視点・言葉
- 家族からの視点・言葉
- 知り合いからの視点・言葉
- 一緒に働いている人からの視点・言葉
- 日本から見た視点・言葉
- 海外から見た視点・言葉
キャッチコピーへの向き合い方
自分にしか書けないキャッチコピーを書くために、自分の感情が動いた瞬間に意識を向けるようにしていました。
介護施設で働きながら取材をする
ぼくが介護施設で働いている理由のひとつに、キャッチコピーを書くための取材という側面があります。もちろん介護職員として高齢者と向き合うことも好きです。
日々、介護施設で働きながら感じたことをメモに取っていました。とくに感情が動いた瞬間・気持ち・出来事を書き留めておきます。
介護施設で働くことになったキッカケとは
介護施設で働くきっかけになった出来事や介護現場の取材方法に関しては、次の記事に詳しく書いています。
プロも参加する宣伝会議賞で勝つためには
宣伝会議賞はプロも参加しています。
プロに太刀打ちするには、広告対象や課題を外側から調べた情報でキャッチコピーを書いても勝てないと思いました。
やはり体験から出てくる言葉にはインパクトがあります。プロのコピーライターは絶対に介護職員として現場で働くことはできないだろうと思いました。
素人がプロに勝つためには、プロに出来ないことをやったほうがいいだろうと思ったのです。
キャッチコピーの技術は、書いていれば身についてくる。でも体験や経験は飛び込まないと得られません。リアリティーのあるキャッチコピーを書きたかったのです。
宣伝会議賞にチャレンジする理由
介護の仕事は楽しいことばかりではありません。むしろ苦しいこと・辛いことのほうが多いかも知れません。
昨日まで元気にデイサービスに通ってくれていた方が、突然パッタリ来なくなるのです。築いてきた関係性の糸は無情にも引きちぎられ、その方と二度とお会いすることもなく日々は続いていきます。
それでも高齢者の方々へ積極的に関わっていかなくてはなりません。それが仕事だからと簡単に片付けられない感情があるのです。
キャッチコピーは、感情を外に吐き出す行為です。
人間は頭で思っていることを紙に書いて外に吐き出すことで、はじめて物事を客観的に捉えるのではないでしょうか。
ぼくは感情のモヤモヤを、キャッチコピーで消していました。
あなたもぜひ、キャッチコピーを書いて言葉にしてみてください。